某大手損害保険会社の自動車保険部門サービスセンター(SC)で働いていた時の備忘録。
仕事で得た知識を書き留めています。
自動車保険の補償内容、特約について。
交通事故の示談代行の実務について書いています。

交通事故

クレーン車事故・栃木県鹿沼市と自動車保険

投稿日:2011年4月30日 更新日:

クレーン車事故にて小学生6人が亡くなった件について。
クレーン車事故を起こした26歳の運転手は、てんかんの持病があり以前も同様の事故を起こしていたと報道されています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110428-00000008-mai-soci
クレーン車事故について、ヤフーニュース。
てんかんという病気について偏見は持っていないつもりですが、リスクを負う患者が、クレーン車事故のように重大な結果を起こしかねない職業に就くのは間違っていたと思わざるを得ません。
これがクレーン車などの重機ではなく、普通自動車であればここまでの被害は出なかったのではないでしょうか。

クレーン車事故は自動車運転過失傷害容疑の現行犯逮捕です。
危険運転致死傷罪の適用も…という声を聞きましたけれど、危険運転致死傷罪は「故意」が認められないと適用は難しいため、自動車運転過失傷害となったのでしょう。
交通事故で人身事故を起こした場合、たいていは業務上過失致死傷罪が適用されます。
ここで言う業務上とは、仕事という意味ではなく、プライベートでも何でも自動車を運転しての事故なら「業務上」になります。
業務上過失致死傷罪は、自動車の運転を「業務」に見立てて、運転時の注意を怠ったため人身事故に至った。ととらえるのが一般的です。
業務上過失致死傷罪の中の1カテゴリーとして自動車運転過失致死傷罪が定められていて、これは特に悪質な交通事故犯に適用されます。
とうぜん、自動車運転過失致死傷罪は業務上過失致死傷罪よりも量刑も重く、7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金となります。
なお、これらの量刑には情状酌量がよく行われています。
被害者側から刑の軽減を嘆願すれば、考慮される場合が多いのです。
クレーン車事故の運転者の母親が反省の手紙を書いたそうですが、前科があることも考えうがった見方をすれば、情状酌量のための行動と言えるかもしれません。
もちろん真に反省してのことかもしれません。

クレーン車事故のようなケースでは、自動車保険はどうなるのかも簡単に書いてみます。
クレーン車事故のように運転者の持病による交通事故でも、基本的に自動車保険は使えます。
対人賠償保険、対物賠償保険といった事故の相手方に損害賠償する自動車保険は問題なく使えます。
人身傷害保険や車両保険のように自分自身への補償を目的とした保険も、おそらく使えます。
というのも、人身傷害保険・車両保険の免責事由には、
「被保険者の故意またはきわめて重大な過失、無免許運転、酒酔い運転、麻薬等の薬物服用中の運転によって生じた損害」
という項目があるのですが、持病による意識喪失はこれらに当てはまらないからです。
故意の証明の難しさは、危険運転致死傷罪のとおりです。
またクレーン車事故の運転手はてんかんの薬を医者の指示通り飲んでいなかったそうですけれど、これが重大な過失に当たるかどうかは私には分かりません。
クレーン車事故ほど重い結果にならない事故でも、例えば風邪薬を飲んで眠気が出て交通事故に至った、という場合でも保険は使えます。
常識から考えればNGであるものの、自動車保険の約款に定められているのはあくまで「麻薬等の薬物服用中」。つまり違法な薬物に限定されています。
睡眠薬も「故意に」ではなければOKということです…。
もっと意地悪な言い方をすれば、故意に睡眠薬を飲んで意識をなくして運転しても、事故後に「故意ではなかった」と主張すれば通ってしまう可能性があります。
客観的に故意を証明するのはとても難しいです。
裁判のための公的な捜査ならともかく、一介の保険会社ではまず無理でした。

クレーン車事故に少し似た案件が、自動車事故の担当者をしていた頃ありました。
心臓病の持病を持った運転者が運転中に発作を起こし意識をなくして、事故になった件です。
クレーン車事故のように明らかに予見できる病気ではなかったし、運転者本人以外に人身はなかったので、クレーン車事故とは意味合いが違いますが。
その事故も仕事中の営業車での事故でした。
事故後、会社側は運転者の病気を知らなかったと言いました。
自動車社会において、車の運転ができないことが著しい不利になる。それで持病を隠して仕事に就く。
そんな構図が見えて、いたたまれない気持ちになりました。

交通事故は誰の身にも降りかかる出来事です。
亡くなった小学生たちのように巻き込まれることは防げませんが、せめて自分が加害者にならないよう、十二分に気を付けなければいけません。
自動車は走る凶器とも走る棺桶とも呼ばれます。
凶器と棺桶がそこら中を走り回るなんて、ぞっとしませんよね。
最後になりましたが、今回の事故で亡くなった子供たちの冥福をお祈り申し上げます。

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-交通事故


  1. しゅばるつ・ぶるぅだぁ より:

    とても気になってたので
    たいへん参考になりました。
    ありがとうございます。

  2. 雨音 より:

    コメントありがとうございます。
    参考になれば幸いです。

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