某大手損害保険会社の自動車保険部門サービスセンター(SC)で働いていた時の備忘録。
仕事で得た知識を書き留めています。
自動車保険の補償内容、特約について。
交通事故の示談代行の実務について書いています。

自動車事故部門の仕事

交通事故と小額訴訟

投稿日:2008年10月3日 更新日:

交通事故、特に物損事故では小額訴訟がしばしば行われています。
小額訴訟とは、損害賠償の請求額を60万円以下の金銭に限定した、簡易裁判です。
請求額が60万円を超える場合でも、1度の小額訴訟では60万円までしか請求できません(一部請求)。
複数回に金額を分けて小額訴訟を起こすことは可能です。
交通事故小額訴訟では、格落ち(事故落ち・評価損)や時価額のために行われることが多いと思います。
小額訴訟は、通常の裁判とは違う点もたくさんあります。
弁護士や司法書士、行政書士を立てずに自分で行うことができる点も特徴です。
以下、交通事故小額訴訟についてご説明したいと思います。
人気ブログランキング保険 にほんブログ村保険


 
交通事故に限った話ではありませんが、小額訴訟を行う場所は、被告の住所地を管轄する簡易裁判所、債権の義務履行地の簡易裁判所、交通事故のあった場所の簡易裁判所のいずれかになります。
小額訴訟の法廷では、裁判官、原告、被告など出席者が丸テーブルを囲んで座り、対話をするような感じで審理が進められます。
小額訴訟を起こすには、定型の用紙に記入をして訴状とし、訴えを起こすことができます。
口頭で裁判所に申し立てることもできますが、訴状を使うのが一般的です。
弁護士を立てるまでもなく、自分で簡単に手続きできます。
小額訴訟では訴訟費用も安く、500~5000円程度の印紙代と書類送付のための切手代くらいで済みます。
弁護士などを雇わなければ、費用はそれだけです。
もちろん弁護士費用特約をつけていれば、保険から弁護士費用が支払われます。
保険会社の交通事故の担当者も同席してくれます。
100:0、10対0の過失ゼロの物損の被害事故の被害者で、加害者がまともに示談も賠償しようとしない場合も小額訴訟の利用をお勧めします。
(車両保険に加入していれば、自分の車の修理費は保険から支払って、加害者への請求は保険会社がやることもできます)
ただし金額が60万円以下なので、人身事故になってしまうと金額的に不足と思いますが…。
また、裁判と言うと長引くイメージがありますが、小額訴訟は1日限りで審理を終わらせます(一日結審)。
迅速、スピーディなのも小額訴訟の特徴です。
小額訴訟で判決が出たら、仮執行宣言が出されます。
被告がそれに従わなければ、強制執行が可能です。
お給料や預金、家財道具の差し押さえとかですね。
また、被告が正当な理由なく審理を欠席すると、原告の不戦勝となります。
小額訴訟の注意点は、まず、相手の所在が分からないと訴訟提起ができないこと。
訴状を送るにも行方不明ではどうにもこうにも。
また、小額訴訟の判決に対しては控訴できません。
判決内容が原告の思った通りにならなくとも、自分も相手も文句は言えないのです。
ただし、その判決を下した簡易裁判所への異議申し立ては認められます。
被告が小額訴訟から通常の民事裁判へ移行を希望したら、原告は拒否できません。
経費の請求を敗訴した側にすることもNGです。
また、小額訴訟は60万円以下の金銭でのみ損害賠償の請求ができます。
高額な請求や金銭以外の希望は通りません。
相手方に支払い能力がない場合も、どうしようもありません。
また、過失割合が未解決であるなど、争い事が多い案件は裁判官の判断次第で簡易裁判所の通常裁判に移行させられる場合もあります。
小額訴訟は、一定の金銭を損害賠償として請求したい場合の制度といえます。
小額訴訟は判決までが速い分、一発勝負の審理ですので、じゅうぶんな証拠・書類を用意しましょう。
証人なども呼ぶと効果的です。
小額訴訟に必要な証拠書類は、まず交通事故証明書。
警察に交通事故を届け出ていれば、発行されます。
取付には費用がかかるので、保険会社で取っているのであればそれをもらいましょう。
次に、請求額の根拠となるものです。
格落ち(事故落ち、評価損)の事故減価額証明書など。
時価額の算定の根拠となる、中古車販売価格の平均額。
自分のケースに似た、過去の判例
自分に有利な判例を資料としてまとめておきましょう。
その他、上申書などです。
上申書は自分の主張をちゃんと筋が通っているとまとめた書面です。
書式は自由なので、裁判官に是非、見てもらいたい点がある時は書きましょう。
これらは全て裁判官に自分の主張が正当であると認めてもらうためです。
スピード結審のため、証拠類はその場で取り調べられるものに限ります。
ところで、裁判官は和解(話し合いでの解決)を勧めてくることが多いようです。
小額訴訟でも、裁判官は「判決」という形で判断を下すより、当事者同士で和解をして欲しいみたいです。
原告がどうしても和解を突っぱねた場合に判決となります。
和解と判決、どちらを選ぶかは交通事故の当事者である、あなた次第。
余談。
小額訴訟は原告1人につき、同一の簡易裁判所では年に10回までしかできません。
これは小額訴訟は、法律知識がじゅうぶんでない一般市民に対して裁判所の門戸を開放したものであり、金融業者や取立業者などが借金・債権取り立てに少額訴訟を独占して、一般市民の利用を阻害・邪魔しないようにするためです。
で、保険会社は原告としても小額訴訟をけっこう利用します。
んで、いちおう簡易裁判所ごとに小額訴訟の回数を確認するのですが、何かいつでも7回目くらいなんだそうです(笑)
保険会社は原告となっても、それは交通事故に遭った一般市民である契約者のため。
その辺は裁判所も了解していて、大目に見てくれているとのことです。
小額訴訟はこのようなものですが、イメージはつかんでいただけたでしょうか。
小額訴訟は交通事故、特に物損事故において便利な制度です。
示談がもめる場合、賠償金額に納得が行かない場合は、利用してみるのも手だと思いますよ。
小額訴訟の具体的な手続きや流れは、保険会社に聞いてみて下さい。
弁護士や行政書士などのホームページにも出ている場合もあります。
過去の判例は、交通事故に特化した弁護士のサイトに詳しく出ていると思うので、参照してみて下さいね。
記事が参考になったら、ランキングのクリック応援をお願いします。
人気ブログランキング保険 にほんブログ村保険

-自動車事故部門の仕事

関連記事

no image

自動車事故の種類

にほんブログ村 保険情報 自動車事故部門で報告を受けた事故は、何種類かに分けられます。 大まかには2つあって、A事案・B事案と呼ばれていました。 A事案は、車両単独などの自損事故、契約者が追突をした1 …

no image

駐車場での自損事故

交通事故、というほどではないのですが。 自家用車で自損事故を起こしてしまいました。父が。(苦笑) 事故の場所は近所のスーパーの地下駐車場です。 自動車事故、交通事故の仕事をしていた頃なら、以下のように …

no image

東日本大震災 損害保険の立場から

東日本大震災と名付けられた大地震が起きてから、2日少々経過しました。 ニュースを見てもあまりにひどい状況に絶句しています。 北海道は幸いにも被害は少なく、私の住んでいる地域では皆無でした。皆、日常生活 …

no image

高額の物損事故

自動車保険の対物賠償保険はほとんどの方が加入していると思います。 対人賠償保険は人のケガや後遺症、死亡に対して損害賠償する保険。 対物賠償保険は、人以外の「モノ」を壊してしまった時に損害賠償をするため …

no image

ひき逃げと保険

ひき逃げは、残念ながらなくならない犯罪です。 ひき逃げに遭ったとき、どう対処すればいいのか簡単にですがお話しますね。 ひき逃げは、当然ながら相手が分かりません。 ひき逃げの犯人が見つかれば、その相手に …