某大手損害保険会社の自動車保険部門サービスセンター(SC)で働いていた時の備忘録。
仕事で得た知識を書き留めています。
自動車保険の補償内容、特約について。
交通事故の示談代行の実務について書いています。

自動車事故部門の仕事

物損交通事故の損害額の算定

投稿日:2008年10月1日 更新日:

人間のケガや死亡を伴う交通事故を人身事故と言い、人間以外のモノに損害が出た事故を物損事故といいます。
物損事故の損害賠償の対象は、人間以外のあらゆるものです。
犬や猫などのペットも、法律上ではモノ扱いになってしまいます。
交通事故の主な物損の損害は自動車ですが、それ以外のものもあります。


 
自動車の損害額は、どうやって算定するかご存じですか?
通常は、修理工場に事故車を入庫させます。
入庫すると、修理工場から保険会社の事故担当者に連絡が入ります。
事故担当者は事故車の壊れた部分、損害箇所や、修理費の概算を確認します。
入庫した修理工場からさらに外注に出る時は、その修理工場も聞いておきます。
事故担当者は、事前に確かめてある事故の状況と、事故車の損害の状況を照らし合わせ、協定の方法を決めます。
協定とは、修理工場と保険会社の間で交わされる約定で、修理の内容や修理金額を決めることです。
協定の方法は何種類かあります。
一般的なのは修理工場に写真と見積もりを提出してもらい、保険会社の技術アジャスターが内容を確認し、工賃などを含めて修正すべき点があれば直して、最終的な修理金額を協定します。
これが、車の損害額になります。
写真はアナログのものもありますが、デジタルカメラで撮影した画像を送信する場合もあり、最近ではデジカメの画像の方が多くなってきていました。
見積書だけでなく写真も必要なのは、損害保険(損保)の基本である実損てん補の考え方から。
実際に車が壊れていることを確認して、その損害の個所を修理するためです。
協定の方法には立会というのもあります。
技術アジャスターが修理工場、もしくは事故車が置いてある所有者宅に出向き、直接、損害を確認する方法です。
損害額が大きい場合や、小さな損害でも整合性に問題がある場合は立会になります。
全損の場合も原則、立会です。
アジャスターが直接、事故車を見て、詳しく確認するため、問題が起こりそうな案件ではよく立会をお願いしていました。
契約者や相手方の中には、立会しないと正確な損害額が出ないのではないかと思っている人もいましたが、事故状況や損害箇所、修理金額などに特に問題がなければ、写真と見積もりでもちゃんと損害額の算定ができます。
修理工場と保険会社がつるんで、勝手な金額を出すなんてことはありません。
一般の人からすると、ちょっとこすっただけの車体の傷の修理費が数万円とか、バンパーがへこんで部品交換と周辺の修理で10万円超とか、とても高く感じると思います。
でも、自動車はそれ自体が数十万から数百万円もする高価なもの。
部品代や修理代金が高くなるのはやむを得ないことです。
だから、自動車保険なんてものが存在するのです。
また、対物賠償の場合は交通事故の時、車に乗せていたものが壊れた時も賠償の対象になります。
私が担当した案件では、ノートパソコンやメガネなんかがありました。
こういう場合は、所定の用紙を送って壊れた品を記入してもらい、その写真も付けて返送してもらいます。
パソコンであれば、メーカーや型番、購入時期に、保証書などがあれば添付してもらいます。
購入金額がそのまま賠償されるわけではなく、減価償却をした上での損害賠償になります。
車以外の損害は、対物賠償についてのみです。
車両保険は自分の車だけを補償する保険ですからね。
以上の、「壊れたもの」を直接損害といいます。
間接損害というのもあって、それは代車や休業損害になります。
100:0、10対0の被害事故であれば、被害者が請求すれば代車はたいてい認められます。
最近は90:10など、過失ゼロではないにしろ加害者と被害者が明確な場合には、代車を認めるケースも出てきました。
少し前までは、双方に過失割合が発生する交通事故では、まず代車は出してもらえなかったものですが。
お互いに過失割合が出る交通事故で代車が出ると、過失分だけ被害者も代車代金を負担しなければいけません。
代車は、レンタカーか工場代車が主なものでした。
レンタカーは「わ・れ」ナンバーの、正規の認可を受けたレンタカーを使います。
損保代金というのがあって、普通のレンタカー代金よりは安く借りられました。
いずれも1日単位で、軽自動車で3000円台、カローラなどの1300~1500CC程度で4000~5000円、ハイクラスの乗用車でも8000~10000円くらいでした。
レンタカーでの代車は、基本的に事故車と同等クラスのものを出します。
被害者の了解が取れれば、少し下のクラスの代車を出す時もあります。
工場代車は、レンタカーの認可を受けていない一般の車で、各修理工場で持っている車です。
事故以外でも、車検の時などに代車として貸し出されることがあるみたいです。
レンタカー以外の車に賃料を払うのは、法律で禁止されているので、工場代車の支払いは「謝礼金」の形を取ります。
1日あたり税込3000円が規定でした。
たまに、「3000円?安いよ、もうちょっと出してよ」という修理工場もいるのですが、それは無理というものなのです(笑)
また、交通事故に遭った車にはETCがついていて、高速料金が割引されていたけど、代車にはETCがなく割引にならなかった。
という案件もありました。
その場合は、ETCの割引料金の直近数ヶ月分の請求明細書を提出してもらって、差額を損害賠償として認めました。
この被害者は仕事で高速道路を毎日使っていて、高速道路使用の必要性が認められたからです。
時々レジャーで使う、程度では認められなかったかもしれません。
また、損害賠償としての代車ではなく、車両保険の特約の代車特約で出した代車については、そのような差額の請求は不可能です。
余談ですが、私が担当したことのある案件で、超高級外車が100:0の被害事故に遭い、代車を出したことがありました。
しかしそのような超高級外車のレンタカーなんてありません。
そもそもレンタカーは国産車ばかりです。
被害者には渋い顔をされましたが、国産の最高級クラスの代車で我慢してもらいました。
事故車はフェラーリの何かスゴイやつでした。
協定を担当したアジャスターも「うわ、これすげえな」とか言っていました。
小損だったのに、部品代がやたら高価だったのを覚えています。
休業損害は、車を使って商売している人への補償です。
休損ともいいます。
バスやタクシー、運送会社のトラックなど、代車を出すわけには行かないケースです。
タクシーについては内部規定があったのですが、他の場合は複雑です。
直近数ヶ月の売上・利益表や、陸運局か何かの運行表を提出して勘案するというものでした。
これはアジャスター担当案件になるので、かなりうろ覚えです(汗)
ちなみに被害者に代替車両があって、それで業務をまかなえる場合は休業損害は出ません。
レンタカーも1台も代替車がないということはまず、ないはずですので、レンタカー会社に対しては休業損害は支払わないことになっていました。
休業損害は、基本的に100:0の交通事故で適用されます。
休業損害の他のケースは、スーパーの駐車場の料金箱を車でぶつけて壊してしまって、使えなくなった案件がありました。
料金箱が修理して戻るまで、その駐車場は無料で開放されていました。
駐車場料金の過去数ヶ月の明細を出してもらい、日割りで平均して休業損害としました。
休業損害は人身事故に多いですが、物損事故にもあるのです。
でも、ケガや後遺障害、死亡につながる人身事故に比べ、物損事故はモノを修理すれば解決なので、まだ気が楽です。
過失割合では示談がもめる場合も多いけど、いつかは解決します。
慰謝料もありませんし。
慰謝料と言えば、こんな判決がありました。
長年飼っていた犬が、交通事故で死んでしまって、それに対して慰謝料を認めた判決です。
普通ならば犬や猫などは、血統書つきで価値があるとかでもない限り、大した賠償の対象にはなりません。
私も猫を飼っているので、心情的にはよくわかるのですが…。
裁判に訴えない限り、ペットの慰謝料請求は無理なんですよね。
ここで説明した以外のケースでも、判例では認められることもあります。
その辺りは、弁護士などのサイトで詳しく解説してあると思います。
特に交通事故を専門とした弁護士行政書士のサイトは、色々とためになる判例と情報が多く出ていますよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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-自動車事故部門の仕事


  1. noria より:

    突然のコメント申し訳ありません。
    相手保険会社の査定員 (アジャスターっていうんですかね)その方が 
    修理額算定をしたときに査定した修理額が時価額以上になるのに、修理が終わり示談交渉のときまで、通知がなかったのですが・・。
    修理費が時価額を超えたときは経済的全損に
    なるのでそれを通知する義務があるとおもうのですが。
    このような示談の進め方はいいものなのでしょうか?
    相手保険会社はこちらが立会いしたときには
    すでに修理に入っていたので修理するものだと思い言わなかったという回答でしたが。
    こちらの修理工場の方にも通知はなく、経済的全損が分かれば、修理を中断し全損になるがそのまま修理をするか、確認しないといけないのではないかと言ってます。

  2. 雨音 より:

    noriaさま、ご訪問ありがとうございます。
    全損だったのに保険会社からその旨の報告がなかったのですね。
    事故状況や過失、どこの保険会社か分からないのでその辺は何とも言えませんが、全損になった場合は知らせるべきです。
    修理が終わったということは、相手方に全損時修理差額特約があったということなのでしょうけど。
    修理差額特約は過失割合が出る事故ではあまり使わないので、100:0の被害事故でしょうか。
    双方に過失が出る場合は、自分の車の査定は相手保険会社がやっても、示談の窓口は自社保険会社になるので、全損の報告も自社の保険会社からくると思います。
    私が事故担当をしていた時は、自社契約者側が100:0の加害者である場合なら、
    ・相手車が全損と判明した時点で、契約者に知らせる
    ・修理差額があれば相手の意向により修理が可能なことを説明
    ・時価額等の示談交渉を任せてもらえるならその了承をいただく
    その後、
    ・相手方に全損の旨を伝える
    ・修理意思の確認、時価額の提示などを行う
    ・相手方の意向に沿って対応
    ・契約者に状況を報告
    という流れ…というか、マニュアルでした。
    なので、車両所有者に全損の説明がないのはおかしいですね。
    ただ、全損になっても修理可能であれば修理したいという方はかなり多いです。
    保険会社がどの時点で全損と確認したかのタイミング、また既に修理に入っていたということで、noriaさまに修理意思があると思われてしまったのでしょうね。
    普通は修理工場で、全損になりそうな時は修理に入らないものです。
    全損で時価額を金銭にて受け取る場合は、修理費がかかってしまっているといけませんから。
    色々と行き違いがあったように感じます。
    でも、本来は全損になったことをご本人に知らせて意向を確認するべきです。
    とはいえ、修理が完了してしまった今では、これ以上の賠償を請求するのは難しいのではないかと思います。
    あまり役に立たない回答ですみません。

  3. noria より:

    雨音様 お返事ありがとうございます。
    補足させていただきますと現在示談交渉中で
    私の保険会社はあいおい損保
    相手の保険会社は朝日火災です。
    当方過失1 相手過失9
    当方優先道路直進中の信号のない
    T字路での左側面追突事故でした。
    搭乗者が頚椎捻挫になり人身事故で届出をしております。
    こちらの修理費用75万円のところ
    時価額54万円ということでの
    経済的全損です。
    当方は車両保険に入っており協定価格は85万です。
    最初の査定から
    経済的全損という判断に1週間ほどの間がありその間に当方は修理工場に入っていたようでそこに相手アジャスターの方が来られ修理されるんですよねって言っただけで全損になったことは言われなかったそうです。
    (修理工場の方のお話では)
    1週間も査定に時間がかかるものなのか?と
    言っておられました。
    相手側は全損時修理差額特約には入っていないようなのです。入っていれば差額を補償してくれるはずなので。
    当方保険会社も車の修理が終わり示談交渉
    の段階になって経済的全損という話を聞いたそうなのです。
    こちらの保険会社は修理前に全損になる旨を
    相手方に伝えて相手は修理せずに廃車されたようですが・・・。
    私には相手保険会社はこちら側が車両保険を
    使って直すものだと決め付けて時価額と修理費用の差額をこちら側に負担させようとの考えあえて言わなかったのでは?と直してしまえば乗らざるをえないですし・・・
    このようないきさつがあり私なりにこのやり方はどうなのか調べておりました。
    雨音さんは元保険会社社員さんでいらっしゃったようなのでお聞きしてみたしだいです。
    やはり、先に知らせるべきですよね。
    まだ、示談はしておらず時価額の上積み交渉をしてみるつもりでおりますが・・・。
    長文になりましてすいませんでした。
    保険会社は実名で書いておりますが支障があれば伏せてお願いします。
    他の皆様の参考になれば幸いです。
    それでは失礼します。
    noria
    もし2重に送ってしまったらすいません。
    エラーになってしまって・・・

  4. 雨音 より:

    1:9で車両保険では分損、対物賠償では全損ですか…。
    お怪我もされていることで、お見舞い申し上げます。
    相手方のアジャスターがnoriaさまの車両の査定をしたということは、クロス査定ですね。
    相手方には車両保険が加入されていなかったんだと思います。
    お互いに車両保険があれば、自社の契約車両を査定するので。
    ちょっと微妙なケースですので、これ以上は何とも言えません。
    参考にならない答えで申し訳ないです。
    正当な賠償が受けられるよう、お祈りいたします。

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