某大手損害保険会社の自動車保険部門サービスセンター(SC)で働いていた時の備忘録。
仕事で得た知識を書き留めています。
自動車保険の補償内容、特約について。
交通事故の示談代行の実務について書いています。

自動車事故部門の仕事

全損になった時の示談

投稿日:2008年9月23日 更新日:

全損にも何パターンかありますが、対物賠償全損示談について書こうと思います。
対物賠償全損は、修理費用が時価額を超えた状態のこと。
時価額とはその車の現在価値を金額にしたものです。
修理費用がいくらかかっても、対物事故の賠償金額は時価額が上限です。
時価額の算出には中古車市場の小売価格をメーカー・車種・グレード・年式(初度登録)・型式ごとに平均し統計された一覧が掲載されている、オートガイド社「自動車価格月報」(通称レッドブック)を参照します。
小売価格=時価額で、その価格で同程度の車が買えるのだから、修理費にそれ以上の賠償金は出せないという理屈です。
この考え方自体は民法の損害賠償にのっとったものです。
しかしながら、レッドブックの価格は実際の市場より低いことが多いようです。


 
レッドブックは東京の中古車の価格の小売額をまとめたもの。
当然、地域差はあります。
レッドブックは毎月発行され、事故日の月の価格を時価とします。
レッドブックの各地域版もあり、たとえば北海道には「シルバーブック」があります。
保険会社はこれら記載の価格を時価として提示します。
年式が古く、レッドブック等に記載がない場合は新車当時価格の10%が時価額になります。
レッドブックやシルバーブック記載の金額で納得できるなら、示談解決です。
では、納得できない場合はどうしたらいいのでしょうか?
まず、その自動車を修理して乗り続けたいのか、それとも相当金額を受け取って廃車にしてもいいのかを考えましょう。
修理したい場合は、時価額と修理費の差を見てみます。
あまりに差がある時は無理ですが、数万円程度なら何とかなる時もあります。
修理費には正直、高い、安いがあり、ディーラーの正規の修理法よりは街の板金塗装屋の方が割安です。
保険会社は提携工場を持っており、そこを使うと融通が効く場合が多いです。
また、リサイクル部品などを利用することにより、修理費を抑えることもできます。
100:0、10対0の被害事故であれば、入庫した修理工場の工場代車を出してもらってみましょう。
工場代車はレンタカーではありませんが、対物賠償の代車の謝礼金として日額税込3000円が保険会社から支払われます。
代車代金は本来は間接損害と言って、直接損害の修理費や時価額とは別枠で支払われる賠償金です。
工場代車は修理内容を勘案して技術アジャスターが必要日数を認定しますが、この日数を少し多めにして修理工場に代車代金を支払い、修理費に充ててもらう方法もあります。
尚、加害者側に「対物全損時修理差額費用特約」が付けられていると、修理費用を時価額に50万円まで上乗せして支払うことができます。
また、自分の車が車両保険に加入しているなら、そちらを使う手もあります。
一般的に車両保険の保険金額(支払い上限額)の方が、時価額よりも高いからです。
車両保険で全損になれば、保険金額以外にも全損時諸費用と称して車両保険金額の10%が支払われます。
車両保険の全損については、車両保険と全損の記事を参照下さい。
廃車にする場合は、時価額がいくらなら納得できるのか考えてみましょう。
時価額を上げる交渉に入ります。
時価額の交渉には技術アジャスターという職種の人が担当します。
彼らは自動車と示談交渉のプロなので、なかなか手ごわいかもしれません(笑)
時価額アップの要因としては、車検残(車検の残り期間)、走行距離、その他オプション装備があります。
車検残は長い方が、走行距離は少ない方が有利です。
レッドブック価格から時価額がどの程度上げられるか、まずは聞いてみましょう。
再提示された金額に納得できれば示談成立です。
やはり納得できなければ、自分で資料を集めることになります。
事故車両と同じ車種、グレード・年式・型式、同じような使用状態・走行距離の車の情報を集めます。
時価額はその車の売却価格ではなく、小売価格です。
中古車屋や中古車情報誌・中古車情報サイトで、対象車の中古車の小売価格を調べます。
最高額1台だけでは取り合ってもらえません。
似たような条件の中古車を何台か集めて平均額を出して下さい。
集めた情報は証拠として使えるように、プリントアウトやコピーをしておきましょう。
時価額の認定についての判例などもあるといいかもしれません。
これは、交通事故関連の弁護士サイトなどで紹介されています。
データを揃えて再度、交渉に臨みます。
交渉次第では時価額の引き上げにつながるでしょう。
全損には「経済的全損」と「物理的全損」があります。
経済的全損は、今まで説明してきたように、時価額を修理費が上回ること。
物理的全損は、修理が不可能なほど車に大きな損害が出ることです。
最近の修理技術はかなり向上しており、余程のことがない限り物理的全損はありません。
なので、経済的全損について説明させていただきました。
物損事故は人身事故よりも早期に示談成立がしやすいとはいえ、やはりもめることも多いです。
損害賠償、賠償金と、お金の話ばかりしてきました。
お金だけの問題ではない、とお考えの方もいらっしゃるでしょうが、交通事故の解決は正当な賠償金を請求し受けることに集約されます。
交通事故では誰もが加害者にも被害者にもなり得ます。
過失割合が50:50前後で加害、被害とも言えない状況もあります。
そのために大切なのは、自分にどんな種類のお金が請求できて、損害賠償として相手にいくら請求できるのかを把握し、示談までの道を見つけることです。
交通事故紛争処理センターなどの相談窓口や、裁判(特に小額訴訟)を使うのも一つの手です。
この辺りは、また別の記事で解説します。
今回、全損時の対応として紹介したのは正攻法だと思います。
裏技とか、必勝法とかまでは私にはわかりません(^^;)
今はネットで何でも情報を得られる時代になりました。
知らないうちに損をしないよう、疑問は担当者に質問し、情報収集もしてみて下さいね。
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-自動車事故部門の仕事


  1. ぺんた より:

    こんにちは。
    最近、車をぶつけられてしまい(相手が信号無視(赤信号)で交差点進入の為)現在修理の見積もりを待っている所です。
    新車でもなく、時価額が大して出そうに無いので、時価額アップの情報を集めるうちにこちらに辿り着きました。
    時価額が「時価額はその車の売却価格ではなく、小売価格です。」という部分がはっきり分かって良かったです。
    同じような車の相場を調べてみたいと思います。有用な情報をありがとうございます。

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